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2026.03.10
間々田優,渋谷るり

トラブルやハプニングさえも熱い勢いで破壊して突き進む。そんな間々田優×渋谷の全国ツアー初日公演の模様をレポート!

 間々田優がアルバム『タイポグリセミア』を、渋谷るりがEP『ヒロイニズム宣言』を手に、全国各地を巡る「アタックテダケロック」ツアーが、3月8日に横須賀楽屋で行った公演よりついに始まった。このツアーは、12月25日に汐留BLUEで行うファイナルまで全30公演行われる。ゲストに玉木慎吾を迎えた初日公演の2人の模様を、お届けしたい。

 

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渋谷るり

 ムンッとした人の熱気で、肌に汗も滲む満員の会場。ライブは、間々田優と渋谷るりの軽妙なトークと、渋谷るりの「開会宣言」から幕を開けた。その内容が「海軍カレーを寸胴ごと食べ尽くす」という宣言。ツアーで回る各地を、ライブ前に徹底して味わい、楽しみ尽くそうとする、この一行らしい宣言だ。その発言へ突っ込む、間々田優。そんなコミカルなやりとりもありつつ、渋谷るりのライブは,間々田優も参加する形で『ヒロイニズム宣言』を歌う宣言をして始まった。手にしたフラッグを揺らしながらデュエットする2人。フロアでも、手にしたフラッグを振りながら、2人と一緒に同じ熱を楽しむ人たちが大勢いた。最初から、場内に気持ちを一つにした空気が生まれれば、渋谷るりの歌へ、間々田優が巧みに絡みながら進める場面も登場していた。2人のコンビネーションが、このツアーの中でどんな風に活かされていくのかが楽しみになる幕開けだ。

  ここからは、アコギを手にした渋谷るりのステージへ。届けたのが、『歌う藁人形』。先の華やかな景色を暗黒の世界へと塗りつぶすように、ギターをストロークしながら、情念や呪いを抱いた声で渋谷るりは歌っていた。曲を着替えたとたん、一気に異なる世界へ塗り上げ、観客たちの気持ちも暗鬱な世界へぐっと引き寄せる。途中から激しくギターを掻き鳴らし、感情を露に歌うなど、楽曲に憑依して歌う。その姿こそが渋谷るりらしい。
 続く『グラジオラス』では、背景にトラックを流し、昭和トレロな歌謡ムードの香る楽曲の上で、見せ物小屋で好奇の視線を集めながらも、我関せずに朗々と歌いあげる渋谷るりがそこにはいた。さすが憑依型シンガー、歌や演奏を始めたとたんに、楽曲の中に描きだした世界へ身を浸していく。ときには狂気を帯びた歌声も響かせながら、彼女は取り憑かれるように歌っていた。

 渋谷るりにとって初めての全国ツアー、このツアーでどれだけ自身の伸びしろが伸びていくのかに、みずからも期待していることを彼女は口にしていた。

  爪弾く一音一音に情念を込めるように。情念を抱いた歌鬼女を完璧に演じるように、渋谷るりは『己以外全員脇役』を歌いだす。力を込めた声の一つ一つから放たれる思いが、触れた人たちの感情にグサグサと突き刺さる。その側では、本ツアーでの企画であるライブアートの場面なのか、間々田優がイラストを描いていた。途中で演奏を止め、手にした  拍子木を鳴らす渋谷るり。その後、フロアにいる観客一人一人を指さして「邪魔者」「変質者」「敵対者」「偽善者」「詐欺師」などなど、彼女は悪辣な言葉を吐き捨てる。そのうえで、渋谷るりはギターを掻き鳴らし、ふたたび『己以外全員脇役』を朗々と歌いあげていった。渋谷るりの歌に心を寄せながら、一心不乱に絵を描き続ける間々田優の姿も、じつは気になっていた。演奏の終りに合わせて絵を完成させるところも、さすがだ。
 最後に渋谷るりは、情念を抱いた歌声で『パラレルワールド・ベイビーズ』を朗々と、とても感情的に歌いあげていった。その声は、祈る思いを胸に、叶わぬと知りながら愛しい人へすがりつくような姿にも見えていた。 

 全身で、一つ一つの曲の世界へと憑依し、潮来(いたこ)してゆく渋谷るり。その姿を目の前で見るからこそ、余計に触れた人たちの心も毒々しく血塗られて…彩られていった。

 

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間々田優

 「ウォーアイニー」と、艶かしくも朗々と歌う声が胸を疼かせた。間々田優のライブは、アルバムでも冒頭を飾った『ごめんねピータン』から始まった。ノリよい楽曲と、気持ちを躍らせる間々田優の伸びやかな歌声に心を躍らせた観客たちが、力強く手拍子をしながら、ステージ上の彼女に熱い視線を向けだした。その視線も感じつつ、間々田優も曲の世界へどっぷりと浸り、腰を振りながら、楽曲の世界をぎらついた映像として3D化するように、声量あふれた声で朗々と歌いあげていった。
 「甘い時間を一緒にお過ごしください」の言葉を合図に歌ったのが、『甘いのがお好き』。同時にバニラの香りのアロマが会場に漂った。こちらも本ツアーの企画である嗅覚でのアプローチだ。ライブでこの曲に触れると、その甘さを、ねっとりとした濃密な蜂蜜のような舌触りにも感じてしまう。手にしたフラッグを振りながら歌う間々田優に合わせて、フロアでも一緒にフラッグや手を振る観客たち。気持ちを熱く、濃密にしていく歌声と楽曲に触れ、心がねっとりとした快楽にどんどん溺れていく。曲を重ねるごとに音の蜜(度)が濃くなるようだ。
 『セカンドダンス』では、冒頭から間々田優と観客たちか「LA LA LA」と一緒に歌いながらスタート。彼女は、胸の内に隠した秘密の感情をチラチラと見せるように歌っていた。でも、見せる仕草が大胆だからこそ、その歌声に心がムラムラしてくる。本質的にエロティックさを持ちながら、それを明るく歌い飛ばす間々田優。気持ちを上げていく楽しさを感じさせつつも、歌声や仕草の端々に好奇心をくすぐるエロチシズムを覚えるたび、それを悟られまいと、照れを隠すように、彼女の歌に合わせて手やフラッグを揺らし、その様子を楽しんでいた。

  この日の間々田優は、衣装姿もとってもエロティック。その姿で、爽やかにエロを振りまくからこそ、心がいろんな感情に惑わされる。

 アコギを手にした間々田優が弾き語りスタイルで、今にも消えそうな歌声を忍ばせて歌いだしたのが、『あいの国』。触れたら壊れそうな崩壊寸前の心模様を、砕けそうな儚い声で。でも、最後の一線を超えぬようにと歌いだす。少しずつ気持ちに熱が帯びるごとに、歌声や演奏にも力が漲りだす。その様が、ありありと伝わってきた。気づいたら、退廃し、絶望の風が吹く荒野で、絶望の向かい風に向かって朗々と歌いあげる間々田優が、そこにはいた。次第に感情を露に、乱れ惑う気持ちのままに歌う、その姿に心が釘付けになっていた。
 言葉のひと言ひと言に深い思いを詰め込むように、間々田優は儚い歌声で『カコ』を弾き語りだした。その横で、一心不乱に絵を描き続ける渋谷るり。言葉の一つ一つに思いや願いを込めて歌う間々田優の声に耳や心を傾けつつ、大きな台を用意し、そのうえに色紙を置き、夢中になって絵を描く渋谷るりの姿が,どうしても気にならずにいれなかった。とはいえ、曲が進むごとに、楽曲の世界へ深く感情移入をし、強い思いを持って壊れそうな感情を朗々と歌いあげる間々田優の弾き語る姿に、いつのまにか気持ちが引き寄せられていた。渋谷るりも、曲が終わるまでになんとか絵を描きあげ、最後にど真ん中五寸釘を刺して仕上げた。ちなみに、2人が描いた絵は、ライブ後に物販で販売になっている。

 次に披露したのが、ファンから寄せられたクリエストに答えるコーナー。物販で購入したカードの中に書かれた曲の中から、その人が聴きたい曲をリクエストする形を取っている。今回選ばれたのが『赤い月・ウサギ』。更に、歌詞に好きなワードを入れてもらうことができる。この日にカードを手にした方がリクエストした言葉が、その人の座右の銘?の「貧乏」。リクエストカードを購入した方だけ、この曲の動画を撮影できるのも嬉しい特典だ。
 リクエストに応じて弾き語りで歌った『赤い月・ウサギ』は、力強く躍動した楽曲。「貧乏じゃない!」と高らかに声を上げて、演奏はスタート。間々田優は、雄々しい声で、ギターを力強くストロークしながら、沸き立つ感情を吐き捨てるように歌っていた。「歌詞変ワード」の「貧乏」の言葉に、ひと際力を込めて歌うなど、「リクエストコーナー」だからこその感謝と遊び心を交えて届けていたのも印象的だった。巧みに、起伏を持った感情的な歌声を響かせる間々田優。気づいたら、フロア中の人たちが、彼女の「わたし生きているんです」の声に向けて、「Oi!Oi!」と熱い声をぶつけていた。まさに,ロックしたステージだった。

 ライブも後半へ。続く『白黒ラブソング』を歌う前に、「魔法のカード」を使用。このカードを購入した人は、間々田優とデュエットをする権利が得られる。この日は、母親と一緒に来た少年が、デュエットの権利を獲得した。事前に渡された歌割りを見ながら、間々田優と少年がデュエット。場末のキャパレーで、何処かうらぶれた気持ちで昭和歌謡を歌う。このシチュエーションを、酸いも甘いも知り尽くした間々田優と純粋無垢の少年が歌を交わしあう。まさに、黒と白が混じり合うデュエットになっていた。デュエットに慣れていない少年を,間々田と母親が巧みにフォローしながら歌えば、観客たちもそこへ参加し, 2人のデュエットを支えながら、一緒にうらぶれた楽曲に、楽しい色を描き加えていった。

 ふたたびアコギを手にした間々田優がトラックを背景に届けたのが、「君が吉川美南」と歌いだす『吉川美南』。弾き語る彼女に向けて、心地よくビートを刻むように手拍子をする観客たち。優しく甘い雰囲気を持って歌いあげる曲を、観客たちの手拍子も含めて、この日の歌と演奏が、この場に、ほんのりと温かく、じわーっと甘いひとときを作りあげていった。
 本編最後に歌った『ナルシスト』では、うらぶれたもの悲しさを紡ぎだす演奏の上で、間々田優が悲々とした表情で、儚いけど、でも芯を持った声で歌いあげていた。淋しくで、悲しくて、儚い女心を、芯の強いシンガーが"生きる希望"をそこへ注ぐように歌う。その不思議なコントラストに、ずっと気持ちが引き寄せられ、惹きつけられていた。今にも涙腺が崩壊しそうな声で、その涙を吹き飛ばすように歌いあげる姿も、印象深く瞼に焼きついた。最後にアカペラで「生きて」と歌う声も、印象的だった。


  アンコールの前に、渋谷るりがステージに登場した。彼女が呼び入れたのが、マスク姿のプロレスラー、タイポグリセミアマン。もちろん歌ったのが、アルバムのタイトル曲『タイポグリセミア』。この曲では、フラッグを手にして渋谷るりも参加。激しく躍動するロックンロールナンバーに乗せ、当たって砕けろの精神のもと、タイポグリセミアマンと渋谷るり、観客たちが一緒になって声を張り上げて騒いでいた。フラッグを手にしたタイポグリセミアマンと渋谷るりがデュエットする姿を味わえたのも、このツアーだからこその醍醐味だ。タイポグリセミアマンが鉄(熱狂)は熱いうちにと歌声で観客たちのハートを連打すれば、渋谷るりがしっかりとハーモニーを描き加えていく。このコンビネーションは、今後も続くのだろうか。この日は、途中でトラックが音飛びするというハプニングが勃発。そのトラブルにも負けることなく、勢い任せで歌いきるところもタイポグリセミアマンらしい当たって砕けろのストロングスタイルだ。むしろ、トラブルを武器に、みんなで気持ちを一つに盛り上がったところが、ライブらしいじゃない。終盤には、音を止め、観客たち巻き込んでアカペラで盛り上がり、トラブルを熱い内に壊して、熱狂の連打で塗り替えていった。それこそが、タイポグリセミアマンのフィニッシュホールドだ。まさに歌詞にも出てくる「順序が入れ替わったって結果オーライならそれで最高潮」そのものだ。

 この日のゲストシンガーの玉木慎吾を呼び入れ、最後に3人がアコギを手にセッションをしたのが、SEX MACHINGUNSの『みかんのうた』。玉木慎吾のもう一つの姿は、SEX MACHINGUNSのベーシスト。その理由もあって、『みかんのうた』をセレクトする遊び心が間々田優…いや、タイポグリセミアマンらしい。この曲では、玉木慎吾がメイン・ヴォーカルを担当。3人でギターを荒々しく掻き鳴らして歌い、「みかんみかんみ。
かん」とシャウトする。その様が胸を熱くした。フロアでも、熱い手拍子をしながら、一緒に「みかんみかんみかん」と歌う人たちも登場。途中には、3人が巧みにパートを分けて歌を繋いでいく場面も生まれていた。毎回のライブごと、このようなセッションが飛びだすのかも??と思ったら、どのライブも楽しみになってきた。

 

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  今回のツアーでは、間々田優も渋谷るりも、複数のセットリストを用意してライブを行う。1本として同じライブがないので、何本ライブを見ても、毎回新鮮に楽しめはずだ。気になる方は、全公演アーカイブ配信も行っているので、そちらでチェックしていただきたい。

 

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TEXT:長澤智典


セットリスト

渋谷るり
『ヒロイニズム宣言』
『歌う藁人形』
『グラジオラス』
『己以外全員脇役』
『パラレルワールド・ベイビーズ』

間々田優
『ごめんねピータン』
『甘いのがお好き』
『セカンドダンス』
『あいの国』
『カコ』
『リクエストコーナー」
『白黒ラブソング』
『吉川美南』
『ナルシスト』
-ENCORE-
『タイポグリセミア』
『みかんのうた』


ライブ日程は、以下から。
https://rosecreate.jp/mamadayu/live/


SNS
間々田優
https://rosecreate.jp/mamadayu/
https://x.com/demodorimamada

渋谷るり 
https://lit.link/rury_shibuya

玉木慎吾
https://x.com/shingo_tamaki

THOGO
https://x.com/thogo777
https://ameblo.jp/thogo/